スポーツ技術向上・集中力向上のためには「耳」の機能を高める

スポーツ選手を含め、身体の動きを変えるためには、あらゆる要素があります。そこで、スポーツで大切な体の器官は「筋肉」と解釈している人がいます。

筋トレや体幹トレーニング筋肉の使い方など、スポーツ技術を高めるためには、筋肉は必要と解釈します。ただ、世の中には、細い体で高いパフォーマンスを出している人がいるように、筋肉以外にも、大切な要素があります。

その中の一つに、「耳」があります。

多くの人は、スポーツの動作に耳はあまり関係ないように感じるかもしれません。しかし、耳にはあらゆるセンサーや重要な筋肉があります。

この部位の重要性を理解し、スポーツ技術を高め、パフォーマンス向上につなげるようにしましょう。

耳の重要性

では、体における耳の重要性について解説していきます。

・耳は首、肩の筋肉と関連している
・平衡感覚がずれる

一つずつ解説していきます。

耳が緊張すると体の動きが悪くなる

私たちはスポーツをしているとき、耳によって動きが制御されたりスムーズになったりしています。知らず知らずのうちに私たちは耳周りの筋肉を緊張し、体の動きが悪くなっています。

例えば、あなたが野球をしていてバッターだったとします。このときに二つの情景をイメージして、ピッチャーと対決してみましょう。どちらが自分の体が動かしやすいのか想像してみましょう。

  • 自然に囲まれ、のどかな場所で草野球の感覚で相手のボールを打つ
  • 大人数に囲まれた球場で声援や罵声を受けながら相手のボールを打つ

いかがでしょうか。おそらくほとんどの人が「自然に囲まれた」空間の方が体を動かしやすいと思ったのでしょう。これは、「罵声」「嫌味」といった外界の刺激に耳が反応し、耳の緊張が体全体に伝わるからです。耳が緊張すると、耳周辺の筋肉が同時に固くなってしまいます。そして耳周辺の筋肉の緊張は、体の側面から最終的に体全体に伝わります。

外界からの不快な情報を耳が感知して、無意識のうちに体を緊張させてしまうのです。さらに耳周りの筋肉が緊張し続けると、固くなったまま元に戻れなくなります。

例えば、誰かにダメ出しされ続けると、その指摘にだんだん慣れてくることがあります。これは、耳周辺の筋肉が固くなってしまい、情報を受け取るセンサーの感度が鈍くなったからです。すると、体全体の緊張がとれなくなり、内臓器官にストレスを与えます。

これによって、体の中の状態や体質に悪い影響を与えます。

陸上の速い人に共通する平衡感覚の強さ

さらに、陸上の世界では興味深い結果が出ております。それは、ほとんどの100メートル選手の方が100メートルではなく、実際には、101~3メートル走っているというのです。

つまり、2,3メートル分長めにはしっているのです。このように、余剰分が出てしまう理由として走っている最中に身体の軸がずれていることが挙げられます。

体を前に動かす動作とは、左右の脚のどちらかを上げて行われます。左右の脚が上がった瞬間に身体のバランスは崩れてしまいます。そこで、人は全身の筋肉に力みを入れて、不安定な状態から少しでも安定的な姿勢を構築しようとします。

しかし、ここで耳を含めた、平衡感覚が優れている場合、少しバランスの崩れた姿勢になったとしても、脳機能が安定します。すると、必要以上に身体が力みにくいため、長い間不安定なバランスが続いたとしても、身体全体の力みを抑えることができます。

すると、長い間身体に負担なく動作を行うことができるのです。しかし、現代人は日々のストレスや偏った知識によって、身体の使い方を間違えてしまい、少しバランスが崩れた瞬間に過剰に力みが入ってしまいます。

すると、力みが増大し、身体の軸が「前」ではなく、「横」にぶれだします。それによって、前方に進む距離以外に、横に体がぶれる距離が出てしまいます。これによって、直線の100メートル以外に無駄に1~3メートル動いてしまうので、タイムが縮んでしまうのです。

スポーツ選手は筋肉ではなく耳を鍛えなさい

私は、多くの陸上関係者に姿勢や身体の使い方を変えるように伝えたところ、多くの人は「特別なトレーニングをしなくてもタイムが伸びた」と報告をいただいています。この理由として、弓道における姿勢は耳周りについた筋肉の圧迫をとり、通常より平衡感覚が適切に働いたからと考えています。

実際に、私も弓道の姿勢を実践するだけで、走る競技の記録は向上し、さらにトライアスロンのミドル種目完走まで実現しています。つまり、泳いでいるとき、自転車をこぐときでさえも、耳の機能を高めることで、バランス感覚が強くなり、無駄な動きが少なくなるのです。

既存の常識にとらわれ、「筋肉を鍛える」「持久力を高める」「トレーニングの仕方を変える」と考えていると、どこかで実力が頭うちになります。しかし、耳や目といったスポーツにない「無駄な動きをなくす」という観点でスポーツ動作を観察すれば、さらにパフォーマンスを伸ばすことが可能です。

さらに、耳の機能を高める、耳の筋肉を活用することはスポーツのみならず、健康・怪我の観点からも、大切です。そのため、まずは目を向けて、鍛え方を実践するようにしてください。

宮本武蔵の五輪の書からわかる耳の重要性

武道の書籍を見てみると、耳の重要性を説いた文章があります。中でも有名なものとして、宮本武蔵の五輪の書に記された「観の目」の記述があります。観の目とは、感覚器である耳を差し、もう一つ「見の目」として、目を差しています。そして、文章の内容に「観の目強く、見の目弱く」といった文章の記述があります。

この文章の内容のいいたいことは、目の動きや働きにとらわれず、耳の機能を高め、本来の自分の身体感覚を引き出すことを表しています。私たちは普段の生活で、「目」の機能に頼りすぎているばかりに、スポーツのパフォーマンスを下げていることがあります。例えば、目の動きにとらわれてしまったことで、相手の細かい機微や雰囲気が感知できないことがあります。

そこで、少し目を細めて、耳を意識する感じで普段振る舞うと、今まで気づかなかった部位に気づけるようになってきます。小さい物音に気づいたり、相手の細かい動きから「この人こういうことを考えているのかな」と思うようになります。

すると、一歩引いた行動や準備ができるようになります。最近、弓道関係者をつれて、稽古をするときに大切にしている部位として「耳」があります。「目」で見ることをやめて、「耳」で相手の雰囲気気持ちを感じ取るようにすると、今まで見えてこなかった考え方がわかるようになってきます。

例えば、弓道で弓を引いている際は「耳」を意識すると弓を引いていて力んでいる筋肉がまだまだあることに気づかされます。これが、もしも文章を「目」でとらえて、「目」で動作や動きを観察し、「目」で物事を考えていては、いつまでも気づくことができなかったと感じています。

そのため、スポーツや仕事を行う上でも、「全ての情報を目で見るのではなく、「耳」を使って相手のことを観察するような気持ちを持つ」ことはパフォーマンス向上に必要といえます。

耳の機能を高めるには

では、私たちが耳の機能を高めるためにはどうすれば良いでしょうか?具体的に行える方法として、耳周辺の筋肉をゆるめることが挙げられます

耳を引っ張る

まず、耳回りの筋肉を直接ゆるめる方法として、「耳自体を引っ張る」ことが挙げられます。耳を引っ張る動きはヨガやマッサージで一部取り上げられていますが、より耳周辺の筋肉を緩める方法を紹介していきます。

まず、どちらか片方の手で耳をつまみます。耳の穴のある方が内側、頭皮に近い方を外側とします。耳の内側と外側を二本の指ではさみこむように耳をつまみます。そして、頭の骨から耳のつけ根を数ミリ浮かすよう程度に引っ張りましょう。「耳を顔から離し、はがす」イメージで行います。

頭についている耳を少しだけ外に離すようなイメージで行います。呼吸をするときは、頭と耳の間に空気を通りぬけるような感覚で行いましょう。最初は耳を真横に引っ張ります。なれてきたら、上下左右などあらゆる方向に引っ張ってみましょう。

耳周辺だけではなく、「首」「こめかみ」「目」といった他の器官がゆるんでくるのがわかります。耳が緊張すると他の部位も緊張してしまい、これが体全体に伝わります。

上半身の無駄な力みがとれた姿勢をとったり耳自体を引っ張ったりすることで、緊張をほぐすようにしましょう。

少し、目を細めて「音」をよくきくようにする

さらに、日常生活で必要な意識の仕方として「目を細めて」「音をよく聞く」ようにすることです。例えば、仕事しているときに

・目を細くして、字を極力見過ぎないようにする
・となりの人の声などの音を聞く(内容までは聞かない)
・BGMなどの音を聞き、音の変化などを観察する

このようなことを意識して作業をしてみてください。すると、ふつうに作業をするときより、集中してできることがわかります。仕事で集中力がとぎれてしまう原因として、「目で物事を見過ぎてしまう」ことが挙げられます。

そこで、目で見るのをやめて、軽く薄めの状態で外の物音を観察するように作業を行うことで、無駄な力が抜けていきます。

視覚の機能を減らしていきむしろ聴覚の機能を高めていくことで、今までよりも無駄な力がなくなって、動きに徹することができることを理解しましょう

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