「自分の手足に体重を乗せる」身体使いにより、スポーツ技術を向上させる

スポーツ選手でよい結果を残す人は「パフォーマンスにおけるパワーが強い」点にあります。サッカーでは強いキック力、ボクシングでは威力のあるパンチ野球では速いスイング動作にあります。このように、スポーツ技術を向上させるためには、「練習」を続けることはもちろん必要ですが、ある身体の使い方を取得しなければいけません。

それが、「自分の体重を手足」に乗せるように腕や脚を動かすことです。武道の達人や技を持っている方の動きを見ると、小さい体格ても相手を倒したり、互角に張り合えるパワーを持っています。そのパワーとは、動作中に「自分の体重をうまく相手に伝える」力が強いのです。

この「体重を乗せる」身体使いを取得すれば、余計な力みなく、かつ強いパワーをもってスポーツを行えます。

「体重を乗せる」とは

ここで、「自分の体重を相手に乗せる」という意味がわかりにくいので、少したとえ話をします。例えば、壁や誰かを押す動作に例えます。はじめにつま先に力を込めて、壁や相手を押すようにすると、全身を力みます。

次に、かかとに力を込めて、背筋をまっすぐにして押すと、壁や相手を押しやすくなり、力がこめやすくなります。このように、押しやすく、力がこめやすいのは「自分の体重が壁や相手に乗るように伝わっているから」です。

各スポーツで高いパフォーマンスを維持する人には、「動作で確かにパワーは出ているのだが、自分自身は力ませて行っていない」という共通点があります。これは、スポーツにおいて、腕や脚といった筋肉ではなく、「体幹部の体重をうまく手足に乗せて、道具や相手に伝えている」のがわかります。

実際に、格闘技の世界で、相手から拳を一寸(約3センチ)だけ離し、そこから打ち込んで相手を吹っ飛ばす技(寸勁)があります。私も受けたことがありますが、その威力は至近距離であっても、体が吹っ飛ぶくらい強力です。これらの技の特徴としては、衝撃自体は軽いですが、衝撃の持続力が長いことに挙げられます。

ゆっくり出したパンチのほうがパワーが出る

そこで「体重を乗せる身体使い」に関して簡単な実験をします。まず、パンチを出す際に「早く打とう」と思って速くパンチを出してください。次に、「早く打とう」と思わず、むしろ「ゆっくり」の気持ちでパンチを打とうと考えます。そして、首の後ろを伸ばし、両肩を落として、ゆっくりとパンチを打ってください。

すると、後者のほうが、圧倒的に力強く打てて、相手や物体に力を伝えることができます。これは、後者の動作のように行うほうが、腕意外の自分の力(体幹部や脚の力)を活用され、伝わっているのがわかります。

「早く打とう」という気持ちを持つと、脳が「早く動かさなければいけない」と思うことで、腕に大量の血液を流しこみます。すると、脳の反応にともない、腕・手首に強い緊張が起こります。

この緊張反応は筋肉を固めているだけであるために、道具や相手にパワーを伝えるために必要な力となりえません。そこで、脳に「遅く・ゆっくり……」と思わせることで、余計な力みがなくなります。それによって、拳が相手に触れた際に、緊張した腕にとらわれず、体幹部や脚の力もうまく活用できるようになります。

体重を乗せる身体使いを行うには?

では、私たちが体重を乗せる身体使いを行うには、どのようにすればよいでしょうか?武道を行っていない場合、「体重が乗っている」という感覚すらつかみにくいという問題があります。そこで、鍛錬法と気をつける方法について分けて解説します。

鍛錬法

一つ方法として、柔道の受け身動作のように「体を転がす」動作を行うのが大切です。柔道の受け身動作は背筋を伸ばす運動であり、転んで地面への衝撃を適切に受け続けると、身体の使い方が変わっていきます。

体重を乗せる動作を行う際に、自分の体を少しかがめるようにすると、より「体重の乗った」パンチやキックが行えるのがわかります。これは、体を少しかがめることで、背筋が伸びること、さらに脇下の筋肉が張り、胴体部の筋肉を活用できるからです。

注意すべきこと

注意することとして、「腕・脚を緊張させない」ことにあります。体重を乗せる動作とは、体幹部の筋肉を活用することで手足の筋肉だけでは生み出せない筋力を発揮する必要があります。もしも、腕や脚を緊張させてしまった場合、道具や相手にパワーを伝える際に、蓄えていた体幹部の筋肉がうまく伝わりません。

さらに、姿勢も大切であり、できるだけ、骨盤を垂直にして、顎を引くようにしてみてください。これらの内容を取り入れて、サッカーの蹴り・ボクシングのパンチ・野球のバッティング・ピッチングバスケのパスなど様々な分野に応用していけば、スポーツ技術は確実に伸びていきます。

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