スポーツで自分の調子を整えるためには、全身の脱力した姿勢を理解するのが重要です。「力が抜けた姿勢」が最もスポーツでパフォーマンスを出しやすい姿勢だからです。
一流のアスリートたちは、筋肉を脱力させた姿勢を理解し、これを本番に取り入れることで良い結果を出しています。しかし、多くの人はこの「全身が脱力した状態」がわからず、常に体の一部分が力んだ姿勢で動作を行っています。
あるいは脱力といっても、具体的にどこの力を抜けば良いかわかりません。そこで、今回は、弓道の観点から脱力状態について詳しく解説していきます。
脱力状態は非常に難しいと理解する
脱力状態とは、筋肉が柔軟であることを差しています。一言で言えば、簡単ですがこの状態を維持することはとても困難です。なぜなら、仕事、スポーツにおいては、外部からの影響によって、力みやすいからです。特に、以下の場合に、人の体はこわばり、力みやすくなります。
①小さい頃に恐怖心やトラウマがあった場合
②練習通りの動きができず、脳に焦りが出た場合
③外部からのプレッシャーが強くかかり、影響を受けた場合
④勝ち負けなど、結果にこだわりすぎた場合
⑤自分の実力以上の結果を動作しようとしたとき
⑥身体の重心や軸がずれた場合
①は精神的な問題から起こります。小さい頃に、スポーツや試合で特異的な恐怖体験をすると、大人になってもその恐怖感をひきずります。このほかに、「自分の思い通りにいかない」「周りからの応援に気が狂わされる」「勝ちたい・・・・」「必ず成果を出さなければいけない」といった感情によって、筋肉はこわばります。
このように、人は過去の体験や未来への不安によって身体が緊張します。過去や未来への不安をなくし、今の動作や気持ちに真心になることを「無心」といいます。そして、現在ある気持ちではなく、過去へのとらわれ、執着が出てしまうことを「自我意識」ともいいます。この「自我意識」が出てしまうことで、人は思うように体を動かすことを制限してしまっています。
つまり、リラックス状態はその人の精神に大きく関わっていることがわかります。そして、⑥のように、単純に骨格のずれや元々ある筋肉自体の凝りによって力みが生じることがあります。
体の力みは心からくる場合と、身体からくる場合があります。ただ、先ほど言ったように、人の心は様々な要因で揺さぶられ、筋肉の力みにつながります。そのため、スポーツの動作中に、確実に体の力みをとるのは非常に難しいのです。
目を見る気持ちをなくせば、体の力みはとれる
現実的に身体の力みを取り去るには、できることから行うのが大切です。その中で、心の不安からくる力みへを減らす方法があります。それは、普段から少し目を細めて「目で物体を見る」癖をなくすことです。例えば、その場で立ってください。
次に、立って状態から腕を上げ下げしてみてください。次に、立った状態から少し目を細めます。周りの景色の色が薄くなるくらい薄目にして、ぼんやりみます。その状態で腕を上げます。すると、先ほどよりも腕や肩の力みが少なくなっていることが体感できます。
なぜなら、人は「見る」ことによって、あらゆることを思考したり想像し、体がこわばってくるからです。
パソコンの作業をしている最中に、目が力んでしまうのは、眼球の奥の筋肉が力んでいることを差します。しかし、その目の力みによって、肩・腕など別の部位が力んでしまうのは、目の力みが全身の力みにつながってしまうからです。
しかし、少し目を細めて「物体を見る」気持ちが減ってくると、物をみた後に、思考する気持ち・意識も減ります。これによって眼球の奥の筋肉に必要以上に力みがなくなるため、全身に力みが行き渡りにくくなるのです。
つまり、物をみようという気持ちを減らせば減らすほど、体の筋肉に力を入れる意識がなくなっていきます。普段の生活で心がけていれば、身体の力みが減った状態で作業が続けられるようになるため、まずは「意識」することが大切です。
「足裏」全体に体重を乗せ、リラックス状態を維持する
次に、体から身体の力みにつながるのを抑える手法について解説します。具体的には、自分の体重を全体に足裏全体に乗せるように立ちます。リラックスして脚や上体の筋肉に張りがなければ、上半身の重みは足裏全体へ均一にかかります。かかと付近に体重が乗ると、脚の表側、腹部の筋肉が力んでしまいます。
反対に、つま先近くに体重が乗ると、ふくらはぎ、太股裏側が緊張します。つまり、足裏全体へ均一体重が乗るように姿勢を整えるようにします。すると、立った状態で脚や胴体部に力みのないリラックスした状態になります。
そのために行うことは、少し顎を引いて、両肩を下に垂らすように落とすことです。頭を少し後ろに引き、頭を10㎝上に吊り上げるように首を伸ばしましょう。
すると、足裏全体に体重がかかります。これにより、「全身がリラックスした状態」が出来上がります。足裏のどこかに圧迫感があって、上体の重みが集中していれば、その立ち方は失敗です。息を吐いて全身の力を抜くようにして、首を伸ばしましょう。
太っている人の場合は上体が屈んで顔が前に出やすいため、頭部を後ろに引くことを心がけましょう。気持ちが自然に整うようになり、力みがなくなっていきます。私生活でこのリラックスした姿勢を習慣づけると、本番で動揺しづらくなり、最大限の力を発揮することができます。
以上の内容を理解することで、リラックスした状態を構築することができます。全身の力みは心・体の両方の場合から起こります。そこで、日常生活での「目の使い方」「姿勢」を変えることで、リラックスした状態を維持することができるのです。