緊張を本質に取り除く「眼」の使い方

緊張を本質的に取り除く「眼」の使い方

試合中に緊張して、本来のパフォーマンスが出せない人は多くいます。試合で結果が出ないと、緊張してしまうことを悪く思いこんでしまいます。 ただ、緊張反応は身体の仕組み上必須であり、悪い反応ととらえる必要はありません。そこで、緊張してしまう理由をしっかり理解し、適切な対処法を考えるようにしましょう。

弓道の世界では、緊張し、体が力んでしまう場合は「目」の意識を転換するようにします。試合中に「目」の意識を変えることで、身体の力みが奥からとれて、緊張反応を抑えられます。

では、この項ではその具体的手法について解説していきます。

「緊張」は生きるために必要な反応である

まず、スポーツにおいて、「緊張」は悪いことではなく、適度な緊張感を持つ重要性を理解しましょう。

緊張すると、体が硬くなったり、手に汗をかいたりします。これは「緊張反応」と呼ばれます。 緊張する原因は人それぞれ異なりますが、その際に起こる反応はみな同じものです。 これは、人間の生活に必要な生理現象と解釈できます。人間がサルから進化を遂げて、草原を直立歩行しはじめたころ、ライオンなどの肉食獣に襲われる危険がありました。 当時、人間は肉食獣などに命を狙われる状況にあったとき、 緊張によって危機回避をしていたといわれています。暗闇から物音が聞こえると、ライオンがいることを想定し、脳が危機を察知します。

すると、筋肉を固くして毛細血管を収縮させます。こうすれば、肉食獣に噛まれても、血が流れることを最小限に抑えられます。致命傷にならずに逃げ切れる可能性があります。

顔が熱くなって火照るのは、状況を判断して大脳に血液を一気に送りこんでいるからです。胸がギュッとしまるのは敵の攻撃から内臓を守るためであり、手に汗かくのは猿だった名残で枝をつかんで逃げやすくするためです。

また、心臓がドキドキするのは体がいつでも動ける状態にするためです。このように人が生き延びるために防御反応は強化されてきました。緊張したら体に反応が出るようになったのです。

人が緊張してしまうのは、悪いことではありません。全ての反応は生き延びるために必要な生理現象であるといえます。

緊張は目から起こりやすい

ただ、スポーツにおいて「緊張」が良くない理由は、その反応が出すぎてしまうからです。汗の量や心拍数が過剰になりすぎると、かえって体を動かしにくくなってしまいます。

そこで、緊張反応を抑えるようにします。抑える方法は世の中のスポーツ書籍では、「イメージトレーニングをする」「深呼吸をする」などがあります。しかし、実際にその場で気持ちを静めるためには、眼球の力を抜くのが大切です。

なぜなら、普段の生活を含め、体の緊張反応は「目」から起こりやすいからです。

私たちは、どのような経路で「感情」が発生するでしょう。人が持つ感情は「過去の記憶」「外界の影響」から引きおこります。過去のトラウマや嫌な記憶を思い返すと、頭の中は「負の感情」に包まれてしまい、その影響や神経を介して内臓や筋肉に伝わります。

このときに、「目」から入る情報によって感情がぶれてしまうときがあります。野球で、一打逆転の場面に立たされたとき、サッカーでコーナーキックをもらったとき、マラソンで前の人を抜こうとするときに、人は「物」や「人」を強く意識するようになります。

「目」は、外界の気圧、人の声、雰囲気、気配などの状況や情景を観察します。ここ一番で打たなければいけない状況に立たされたら、その情景や雰囲気、周りの観客の声援している姿を「目」で見て、緊張しやすい「環境」「状況」を感知します。すると、脳がその情報を受け取り、腕を含め、身体の各部に大量の血液を送ろうとします。これによって、短い時間で身体を活動的に働かせることができます。この場合、血管内の血流速度が向上する「交感神経」が過剰に働きます。

「交感神経」が働くのは悪いことではありません。なぜなら、スポーツをしているときは、適度に効率よく、内臓や筋肉に血液を送りたいからです。実際に、スポーツのパフォーマンスが良い結果が望めるのは心拍数が通常時より少しだけ高いときです。しかし、交感神経が過剰に働きすぎてしまい、体液が各部に流れすぎてしまうと、逆に筋肉に血液がたまりすぎてしまい、適切に動かせなくなってしまうのです。

野球で、打たなければいけないときは、相手投手をいつも以上に意識してしまい、ボールも必要以上に観察しようしています。サッカーでボールをもらったら、そのボールをきちんともらう気持ちより、「早くもらってシュートを決めないと」という気持ちが先行してしまいます。これもボールや状況からくる「目」からの緊張です。さらに、マラソンで前の人を抜こうとするときに、体より先に「目」が力む場合があります。

これは、弓道のように「正確性を求められるスポーツ」ではよく起こります。知らず知らずの内に、人は緊張しやすい場面に立たされると、眼球周りの筋肉が緊張しやすいです。

目を軽く閉じるような感じにすると、体内の緊張反応が抑えられる

そこで、「目」の意識を変えます。緊張しそうな場面になったら、目を半分だけ開けるようにしてください。何かに集中しすぎていた状態をやめて、少し後ろに引いて、遠目で見るような感じに「目」を使います。すると、先ほどに比べて、目から入る外界の情報量が少なくなります。これにより、情報によって引きおこる刺激や興奮が少なくなるため、交感神経が過敏に働きにくくなります。結果として緊張反応を抑えられます。

本番で緊張してしまったら、目周りの力みを取るように目を閉じてください。すると、周りが真っ暗になり、眼球の緊張を抑えることができます。

さらに、姿勢を正すために、首を伸ばして両肩を落としましょう。できれば、深呼吸を2、3回程度行いましょう。これにより、一時的に上ずった気持ちを抑え、頭に血が上った状態を抑えることは可能です。

無意識に表れていた緊張反応を「目」によって気づいた体験談

例えば、私は弓道の稽古の際、一般人の引いている弓のkg数より、1.5~2倍の強さの弓を引きます。当然ですが、身体のどこかに力みが出ていると、関節の位置がずれてしまい、弓の反発力が集中的にかかってしまいます。すると、弓の反発力を受けきれずに、身体を壊すときもあります。

何回も左拳を痛めた経験があり、その弓を持っただけでつい「弓を握ってしまう」癖がついてしまいました。いろいろ困った結果、「目」の力みが自分の本質的な力みや不安感が来ていると分かったのです。

弓を構えるときに、目線を少し下げるようにすると、まぶたが下がり、薄めに見るようになります。すると、自分では気づかなかったみぞおち周りの筋肉の張りが消えていくのがわかりました。この体験から、自分が知らず知らずに上半身が力んでいたことがわかったのです。弓を引く前の段階で腕に力みが入ってしまう原因が「目」から来ていたと分かったのです。

この事実が分かったときに、通常よりkg数が大きい弓で稽古をすると、どのタイミングで左拳が力んでしまったのかがわかるようになりました。その結果、いまでは、kg数の大きい弓を腕の筋肉を力ませずに大きく引くことができています。

この「目」の使い方を、トライアスロンやマラソンでも応用できないかを考えました。つまり、後半になって身体が力みそうになったときに、意識的に目の開きを薄めるようにしたのです。すると、フルマラソンでは35km地点までは自己記録を大幅に更新したタイムが出ました(35kmまでは、1km 4分15~20秒ペースで通過)。結果的にその大会では自己新記録(3時間5分)を更新できませんでしたが、続けていけば、さらに記録更新は狙えるだろうと考えています。

つまり、「緊張」による不安感とは、「目」に力が入ってしまい、「生命の危機がある」ように脳が勝手に作り出している状態です。そうしたときは目を閉じて姿勢を正し、深呼吸を行いましょう。脳の中のイメージが変化して体をリラックスさせることができます。

まず、凝りを取り去ることを考える

さらに、目に強く緊張が起こらないように、日々、眼球周りの筋肉を緩めておくことが大切です。

 

ヨガやストレッチを行うと、すっきりした気分が得られ、興奮した感情を抑えることができます。その理由として、ヨガやストレッチによって筋肉が緩み、脳機能が安定するからです。そのため、眼の筋肉の力みを取り去り、体が緊張している状態から解放してあげることも大切です。

当健康所では、頸椎の伸ばし方から、目線の置き方、凝りを取り去る方法まで実践していただきます。皆さんが手軽にできることは、「眼自体の眼球の凝りを取り去る」ことです。 毎日続けていくことで、上半身に無意識に出ていた力みが 少しずつ取れていきます。1~3日、5分とはいわず、何カ月もかけて、できれば目自体を大切にする気持ちで方法を学ぶようにしてください。 【眼球の力みの取り方】

①球と眼球周りの骨との隙間を、指を痛くない程度に押す

②少しずつ指圧する力を高めていき、痛気持ちいい程度にとどめる

③の状態から、眼球を上下左右に動かしてみる

④球と骨の隙間の押す場所を変えて、最終的にすべての周りを押すようにする

①~④の動作を行うことで、効率よく眼の筋肉の凝りを取り去ることができます。このトレーニングを毎日続けるようにしましょう。

スポーツ選手は、胴体の動きばかりにとらわれて、眼や耳といった感覚器の重要性を理解していないことがあります。これらの部位は「意識」「精神状態」といった心理学的要素を含んだ重要な部位といえます

これらの部位をおろそかにしては、実際のスポーツで学んだ内容が使えなくなってしまう危険があるため、総合的に身体を学び、トレーニングやスポーツに励むようにしましょう。

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