全身運動を最大限に行うための「腰方形筋」の活用法

全身運動を最大限に行うための「腰方形筋」の活用法

日々、仕事やスポーツを続けていく上で、怪我やパフォーマンス低下を招くことはよくあります。そうして、全身に疲れや衰えを体感したら、「腰方形筋」を意識的に動かすようにすると良いです。

腰方形筋は、肋骨と骨盤の間にかけてついている筋肉です。この筋肉の凝りを取り去り、動作中に使えるようにしていくことで、全身の筋肉を効率よく活用できます。

ただ、腰方形筋を活用するといっても、「なぜ、腰方形筋がスポーツに重要か?」とピンとこないかもしれません。まず、最初は腰方形筋の重要性を理解し、具体的に動きの中へ取り入れる方法について学びましょう。今回は、スポーツでの腰方形筋の重要性、緩め方、活用の仕方について解説していきます。

なぜ、腰方形筋が大事か:肩・胸鎖関節が動きすぎるとスポーツ動作は負担が大きい

「では、腰方形筋がなぜ重要か、簡単な例で「歩き動作」について考えていきます。「歩く」という行為も、腰方形筋をうまく活用できれば、きれいなフォームで、上体に無駄な力みなく行えるようになります。

まず、二つの違った意識をもって歩き動作を行います。はじめに、「腕を振り、胸をねじることを意識して歩く」ようにします。すると、肩、胸の関節が動き、胸部の重心が前方に動くことで、歩き動作が行われます。

ただ、「肩・胸をねじった歩き方」の欠点として、肩と胸関節が動きすぎてしまうため、心肺や肝臓といった部位が動きすぎてしまいます。この動作を続けていると、内臓に負担がかかりすぎてしまうため、疲れやすくなります。

肩関節と胸鎖関節は、動作中にあらゆる方向に動かすことができます。そのために、動作中に意識しやすいというメリットがある反面、デメリットとして「意識しなければ、下半身の筋肉とうまく連動して活用できなくなる」ことが挙げられます。

そこで、次は胸と肩関節を動かさずに「みぞおちを前に出す意識」を強めて歩き動作を行ってみましょう。すると、さきほどの歩き動作より、太ももの付け根の筋肉を強く意識して歩くことができます。さらに、肩・胸の関節が動きすぎず、歩き動作ができるのがわかります。

前者の歩き方の違いとして、歩いているときに使う筋肉が変わっているのがわかります。前者は胸をねじることで、肩甲骨周りの筋肉が働き、それと連動して股関節周りの筋肉が働いて脚が前に動きます(これと「肩甲骨―股関節連動」と表現されることがあります)。

一方、後者は肩甲骨周りの筋肉には、あまり張りがなく、「肋骨と骨盤の間」「腹部周りの筋肉」が収縮することで、脚が前に出ています。後者のように、肩甲骨・股関節ではなく、肋骨と骨盤の間が狭くなるように骨盤が引きあがることで、「腰方形筋」が使えているのがわかります。

みぞおち部を意識して、右脚を前に出したとします。すると、胸の重心が前方に動き、自然と全身が前方向に進みます。もう少し細かく観察すると、右脚を前に出すと、少し「右の太もも付け根から下腹あたりの筋肉が張った感じ」になり、右の骨盤が上に上がることがわかります。

これは、太ももの付け根にある「腸腰筋(ちょうようきん)」が働き、それに連動して、肋骨と骨盤の間にある「腰方形筋(ようほうけいきん)」が働いているのがわかります。これによって、右脚が前に出ます。

このように、「肋骨と骨盤」「下腹あたり」の筋肉が動くように動作を行う利点として、「全体的に関節のぶれが少なくなる」ことが挙げられます。これによって、内臓や筋肉の負担が少なくなります。加えて、肩・胸関節の筋肉を使わずに動作を行えるために、無駄な力みなくなります。さらに、全身の筋肉を同時に活用でき、効率的に動かすことが可能となります。

うまい選手ほど、スポーツ動作で胸が開かない

野球、サッカー、マラソン、水泳、テニス……と、各スポーツ界で技術が高いといわれる選手には「胸が開きにくい」という共通点があります。

例えば、野球の世界では、コントロールの良いピッチャー、バットコントロールの良いバッターは「胸」が先に開くような動作をしません。テニスやゴルフのようなスイング動作をするスポーツでも同様に、うまい人ほど胸の開きが少ないです。マラソンの世界でも、疲れてくる人ほど、胸鎖関節が前に出すぎて、肩が上方に上がりやすいです。そうでない人は胸が開かずに走れます。

世界一のバスケットボールプレーヤーといわれるマイケルジョーダン選手は、右ドライブを行う際に、胸と肩関節にぶれがほとんどありません。野球の世界では、阿部慎之助選手、落合博光選手、バリーボンズ選手などのバッティングフォームを見ると、肩関節と首関節に余計なねじれなくスイングできています。

このような動作を行うためには、肩関節、胸鎖関節を必要以上に動かしてないことが推測できます。むしろ、肋骨と骨盤の間にある「腰方形筋」が動き、結果として上半身全体が動いて、動作が行われていると解釈できます。腰方形筋は体を「反らす・屈ませる」「体を傾ける」「ひねる」際に働く筋肉です。つまり、筋肉の観点で話すと、ほとんどのスポーツで腰方形筋を活用できます。そして、働かせ方が理解できたら、肩・胸関節の筋肉を使わずに、全身運動が行えます。すると、仕事でも、スポーツでのパフォーマンス向上につながっていくのです。

腰方形筋を活用する方法

では、スポーツ動作中に、腰方形筋を活用するためにはどうすればよいでしょうか?

腰方形筋は肋骨と骨盤の間に生えているため、脳から遠い部分です。そのため、直接意識して、思い通りに動かすのは難しいといえます。ただ、関節的に腰方形筋を活用する手法があります。それは、どのような動作においても、「胸を開かない」ようにすることです。

初めに、弓道の世界で実践される「首の後ろを伸ばす」「肩を落とす」姿勢を行います。次に、みぞおちを体の内側に入れるように、胸郭を引きます。

肋骨の中心を触るとゴツゴツ骨が当たる部分があります。これは、「剣状突起」と呼ばれる部位であり、この部位を体の内側に入れるようにします。少し、猫背気味に背中を丸めるようにします。

この姿勢を意識して、「歩く」「体をひねる」動作を大げさに行いましょう。すると、肩・胸鎖関節が動きにくいために、肋骨より下の部分が必然的に動いてきます。このように、上半身が動きにくくなるように、関節の動きを制限してあげると、必然的に肋骨より下にある「腰方形筋」が動いてきます。

これまでお話した「首を伸ばす」「両肩を落とす」「脇下の筋肉を張る」「腕、脚の力みをできるだけなくして動作を行う」ことを意識します。そうして、全ての動作を上記した内容を意識しながら、「大きく行おう」としてください。すると、身体の中心に当たる腰方形筋が動くようになります。全身の筋肉を活用するためには、「弓道の姿勢」に加えて、動作を少し大きめに行うようにすると、腰方形筋をより意識して動作できます。

 

腰方形筋をゆるめる3つの方法

以上の内容を聞くと、腰方形筋を活用してスポーツ動作を行えます。ただ、腰方形筋は「普段の姿勢」「偏ったトレーニング」「内臓疲労」「ストレス」によって、硬くなります。すると、スポーツ中に骨盤と肋骨がうまく動かなくなってきます。

そこで、当サイトの個人指導で実践する硬くなった腰方形筋をゆるめるための方法をいくつか手法を紹介していきます。

後ろに反らせる

スポーツ選手含め、現代人が圧倒的に足りていない運動は「背骨を後ろに反らす」運動です。これは、仕事中でも行える動作なので、意識して取り入れるようにしてください。

まず、立った状態で両足を少し開いて、お尻を少し締めるようにします。その状態で、両手を肋骨と骨盤の間に、当ててください。その際に、肋骨と骨盤の間の中心に親指を当てます。

この状態から体を後ろに反らせます。すると、肋骨と骨盤の間に圧力がかかり「痛気持ち良い」刺激を感じます。後ろに反らし、3~5秒程度静止し、もう一度身体をもとに戻します。この運動を4、5回繰り返します。

少し、角度を変えて行うようにするとより効果的に刺激が入ります。今度は片方の親指を片側の肋骨と骨盤の間に当てます。次に、上半身を親指が当たっている側にひねりながら後ろに反らします。これによって、違う角度から腰方形筋が指圧と刺激が入ります。

人の骨盤は、前や後ろに傾けることができます。その中で、圧倒的に後ろに反らす運動が足りていないために、意識的に取り入れるようにします。この運動を続けて5回程度行い、終わった後に両肩の力みがとれる感覚を手に入れたら腰方形筋が緩んだといえます。

ストレッチポールを活用する

次に、腰方形筋をゆるめる際に、寝ながら行える方法として、「ストレッチポール」を使う方法があります。

まず、仰向けに寝ます。次に、ストレッチポールを用意し、肋骨と骨盤の間に置きます。その状態で重力を利用して、肋骨と骨盤の間にポールを押しあてるようにしましょう。

すると、腰方形筋が指圧され「痛気持ち良い」刺激を得ることができます。この状態で、身体を左右に動かすと、より効率的に腰方形筋をゆるめることができます。寝る前に、ストレッチポールを押し当てて、1分程度押し当てるようにしましょう。

終わった後に、背中が床面につくくらいピタッとつけば、腰方形筋が緩んだといえます。

様々なポーズに「前後に反らす」「左右に傾ける」「ひねる」動作を入れる

次に、準備体操、ヨガといった静的なポーズを取り入れている場合は、その体操中に腰方形筋をゆるめる方法があります。具体的には、行っている体操に背骨を「前後に反らす」「左右に傾ける」「ひねる」動作を取りいれるようにします。

例えば、「ふくらはぎを伸ばす」体操をしたとします。そのポーズの状態から、体幹部を前後に反らしたり、左右に傾けたり、ひねったりしましょう。

このようにすると、腰方形筋がゆるみ、3つの動作が自然と行いやすくなります。

腰方形筋をゆるめると、身体の柔軟性を効率よく高められる

さらに、準備体操に腰方形筋を動かす3つの動作を取り入れるようにすると、「ストレッチ効果を高める」「身体の柔軟性を高める」ことも可能です。

人の筋肉は三次元的についています。そのために、ふくらはぎを伸ばすにしても、1つのポーズを行っただけでは、効率よく全ての筋繊維を伸ばすことができないのです。そこで、ふくらはぎの筋肉を伸ばすポーズをしながら体をひねったり、傾けたりしましょう。すると、ふくらはぎの筋肉の中でも、「内側の方」あるいは「足首に近い方」といった部位がストレッチされているのがわかります。

静的なポーズを取りながら腰方形筋を動かすと、骨盤や肋骨が動きます。この影響により、他の筋肉を違う角度からストレッチさせることができます。よりストレッチ効果を高めたいのであれば、ただポーズをとるだけではなく、そこからさまざまな方向に体幹部を動かすようにすると良いです。

さらに、腰方形筋を動かすと身体の柔軟性を高めることも可能です。例えば、前屈運動をしたいとします。通常であれば、前屈運動を柔軟に行いたければ、「ふくらはぎ・太もも裏側の筋肉」をストレッチすることを考えるでしょう。

しかし、これとは別に腰方形筋をゆるめることで、前屈運動が行いやすくなるのがわかっています。以下のように動作を行います。

  1. 両腕を壁につけて、体を前に屈ませながら立つ
  2. その状態で背骨を前後に反らしたり、左右に傾けたりする
  3. もう一度前屈を行うと、先ほどよりも行いやすくなる

このように、腰方形筋をゆるめることで、前屈運動を行いやすくすることができます。私はあらゆる柔軟体操に体幹部を反らす・屈ませる・左右に傾ける・ひねる動作を取り入れたところ、他に開脚動作にも効果があることがわかっています。

少し、準備体操に腰方形筋をゆるめる運動を取り入れるだけで、さまざまな効果を得ることができます。より、効率的に全身の筋肉を活用するためには、腰方形筋の働きと活用法を理解する必要があります。

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