サッカーにおいて、「ゆっくりけろう」とすると、強いシュートが打てる理由

サッカーにおいて、「ゆっくり蹴ろう」とすると、強いシュートが打てる理由

サッカーにおいて、強いキックはパスやシュートを決めるために必要です。しかし、実際は強く蹴ろうとすると、力みが出てしまったり、うまく蹴れなかったりと問題が出てきます。

このような悩みにおいて、弓道の世界では「姿勢」「身体の使い方」「意識」を転換し、脚の筋肉を最大限に活用できるようにします。これによって、強くボールを蹴れるようになります。

では、脚の筋肉を最大限に活用するためには何を行えばよいでしょうか?ここでは、その具体的手法について解説していきます。

つい、力が入ってしまうのは、筋肉ではなく脳に原因がある

試合になると、「思うように身体を動かせない」「つい筋肉を力ませてしまう」といった不具合が起こることがあります。このように、状況が変わると無駄な力みが出てしまうのは「脳の働き」が関係しています。

なぜ、緊張すると筋肉の動きは硬くなるのでしょう。このときに体では、「筋肉に大量の体液(栄養分の含んだ血液)が流れている」状態になっています。人は何か思いたつとき、想起的に物事に取り組むとき、エネルギーを必要とします。そこで、脳からの命令で、大きな仕事を成し遂げるために、組織に大量の栄養分を流し、活動しようとします。

しかし、ストレスが過剰にかかり、身体や精神が疲れている場合は、この一連の反応に狂いが生じます。具体的には、「体液が流れすぎてしまう」のです。目の前の状況や外界のストレスに敏感になりすぎてしまい、筋肉や内臓に過剰に流し、ストレスに対応しようとします。

実際に、緊張する場面に立たされたら、心臓がバクバク動くのがわかります。これは、脳の指令によって大量の血液を筋肉に流そうとしているからです。ただ、身体の疲労・日々のストレスが積み重なると、そこまで緊張しない立場であったとしても、強く緊張した状態になってしまいます。

このように筋肉を緊張させてしまうと、サッカーのボールはうまく蹴れません。ロングシュートを打とうとするならば、できるだけ筋肉を柔軟にしておかなければいけません。なるべく筋肉を柔らかい状態に保って、蹴るための力を高めなければいけません。キック力が弱い人の特徴として、蹴る前に自分から「強く蹴ろう」と意識しすぎてしまい、過剰に筋肉を緊張していることが挙げられます。

ゆっくり蹴るように意識する

そのために、筋肉に負担なく強いキックを蹴る方法として、「ゆっくり・遅く」蹴る意識を持つようにしましょう。これは、1章で紹介した「体重を乗せる身体使い」で紹介した原理を用います。

人の筋肉は「強く・早く」と意識してしまうと、脳が筋肉に過剰に血液を送ろうと「緊張」します。結果として、血液が筋肉に流れすぎてしまい、うまく筋肉が働きません。あるいは、頭に血液が集中しすぎてしまい、「血が上った状態」になってしまうのです。

そこで、「ゆっくり、弱く」と意識しながら、ボールを蹴るようにします。

「1-9」の項目では、「強くパンチを打とうとすると、緊張してパンチの力が弱くなる。弱くパンチを打とうとすれば、無駄な力みが抜けて、パンチの力が強くなる」ことを紹介しました。この原理をサッカーに応用します。

つまり、ボールを蹴るとき「ゆっくり、遅く」脚を動かすようにします。ゆっくり、遅くを意識し、体全体の力を抜いてください。そして、最後の蹴る瞬間に、首を伸ばして両肩を落として、頸椎・胸椎を固定します。

すると、脚に力をこめやすくなり、ボールにキック力が伝わります。上手くいけば自分はほとんど力を入れないままでボールが強く飛んでくれるのがわかります。

ゆっくり蹴ろうとすると、「腸腰筋」が機能する

このように、全てのスポーツで「強く」「早く」行おうとしてうまくいくわけではありません。逆に、ゆっくり・遅く・弱く行うようにするほうがうまく動作が行える場合もあります。

「ゆっくり動作を行う」利点として、脳機能が安定することが挙げられます。

「ゆっくり弱く」を意識して蹴ろうとすると、余計な緊張が少なくなり、全身の筋肉が力みにくくなります。すると、同じ蹴る動作であっても、力んで蹴っていたときに比べて、多くの筋肉が働くため、強く蹴れるようになります。

そうして、さらに「ゆっくり・遅く・弱く……」を意識するようにします。さらに、身体の力みをゆるめるように行うことで、さらに蹴る動作を楽に強く行えるようになります。

少し、余談になりますが、ボールをゆっくり蹴ろうとすると、キック力が強くなるのは、理由として、「腸腰筋」が活用されるからです。

腸腰筋とは、太ももの付け根から下腹にかけてついている筋肉です。実際に、「ゆっくり脚を後ろに振り上げよう」と意識して、脚を動かすと太ももの付け根の筋肉が強く伸ばされるのが体感できます。これは、脚を後ろに振り上げるときに腸腰筋が伸ばされているからです。

実際に、サッカーの指導書を見ると、インフロントキックを行うときは、「腸腰筋を意識してキックしなさい」と記されたものもあります。強いボールをけるためには、腸腰筋もストレッチするくらいに、「無駄な筋肉の力みをなくしておく」ことが大切であるとわかります。ちなみに、腸腰筋は後ろに振り上げた脚を引き戻すときに使われます。

こうして、ボールと脚が接触する際に、「腸陽筋の収縮」も付加されるため、この筋肉が働けばより強いボールを蹴ることができます。

ただ、実際の動作にむやみに腸腰筋を意識する必要ありません。「速く振ろう」「強く振ろう」と思わず、ゆっくり大きく脚を後ろに振り上げてみてください。すると、脚を含め、全身の筋肉の無駄な力みが抑えられ、太ももの付け根の筋肉が伸ばされます。

つまり、サッカーでボールを強く蹴ろうとするためには、「意識を転換する」が先に大切となります。

そうして、ひざ下に力みがないまま脚を引き上げれば、振出しに加速が増し、ムチのように脚の先端がしなるように動きます。このような、ムチがしなるように脚が動かすには「速く蹴ろう」と意識してはいけません。

ボールを蹴るときは速く蹴ろうと思わず、「ゆっくり・弱く」蹴るようにします。それによって、脳の働きが安定し、全身の筋肉の無駄な力みがなくなって、強いシュートが生まれます。

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