肩甲骨・股関節周りの筋肉を鍛えてもスポーツ技術が伸びない理由

肩甲骨・股関節周りの筋肉を鍛えてもスポーツ技術が伸びない理由

スポーツにおいて実力向上や体作りのために、トレーニングを行うことは大切です。そこで、スポーツの世界では、肩甲骨・股関節周りの筋肉を重要視されます。ただ、スポーツで肩甲骨・股関節を緩めるにはどのようにすればよいでしょうか? 実際に、私はトライアスロンを行っており、肩甲骨と股関節に関しての重要性は否定しません。ただ、少し補足すると「肩甲骨・股関節周りの筋肉を鍛えたり、動かしたりしただけでは、実際の運動に使えない」と考えています。

そして、肩甲骨・股関節の筋肉を活用するためには、「腰方形筋」が必要です。この筋肉がゆるむと、ジョギングでは、「脚の付け根から脚を前に出せている感覚」を手に入れることができます。そして、結果的に股関節や肩甲骨周りの筋肉が動くようになってくるのです。

さらに、腰方形筋が肩甲骨・股関節よりもゆるめる必要があるのにはもう一つ理由があります。それは、多くの人は、肩甲骨・股関節よりも腰方形筋の方が硬くなるからです。

腰方形筋は「副腎」の疲弊により凝る

腰方形筋は肋骨と骨盤の間にかけてついている筋肉であり、体を前や後ろに倒したり、ひねったりする際に働く筋肉です。

この筋肉はほとんどのスポーツの動きで活用される筋肉です。上半身を立てる筋肉は「背中の筋肉(脊柱起立筋)」、太ももを後ろから前に引き上げるのは「太ももの付け根の筋肉(腸腰筋)」、それに対して、腰方形筋は体を前後、左右に倒すとき、ひねるときなど、あらゆる動きで働きます。

この他に、腰方形筋が重要である理由は、周辺に「副腎」と呼ばれる内分泌系の器官があるからです。人はストレスにかかった際に、肋骨と骨盤の間にある「副腎」からストレス耐性ホルモンが放出されます。これによって、身体にストレスがかかったとしても、体の状態を正常に維持できます。

しかし、ストレスや不安感が積み重なると、副腎からホルモンが放出される回数が多くなるために、副腎に負担がかかりすぎてしまいます。やがてストレスが積み重なると、副腎自体が疲弊します。

このように、副腎の負担が大きくなると、副腎が疲労し、その影響によって、肋骨と骨盤にかけて生えている「腰方形筋」に凝りが出ます。このように、内臓からの疲労によって、関連して腰方形筋が凝ることを「内臓疲労」といいます。この他に、副腎が疲労することで同時に凝る筋肉として下腹にある大腰筋(だいようきん)があります。

さらに、副腎の下には体内の毒素を外へ排泄する腎臓があります。この腎臓が体内毒素を排泄できず、ストレスが積み重なると、腎臓も疲労します。この腎臓による内臓疲労によっても、腰方形筋が凝ります。

このように、筋肉の凝りは筋肉自体の疲労ではなく、内臓の疲労によって起こる場合もあります。この場合、副腎を含めた内分泌系の負担を減らす食事法、マッサージなど違った「ケア」をする必要があります。

腰方形筋が凝ると、肩甲骨・股関節が連動して働かない

スポーツにおける肩甲骨、股関節周りの筋肉を鍛える重要性は認めます。「肩甲骨を動かせば股関節が連動して動き、全身運動が行いやすくなる」「肩甲骨、股関節を動かせば、腕や脚の付け根から動かすことができ、効率よく手足を動かせる」といった説明もうなずける部分があります。

ただ、これらの効果は腰方形筋が緩んでいなければ、体感できません。なぜなら、腰方形筋が固くなっている状態はストレス過多によって、身体が疲労している証拠であるからです。身体が疲労し、全身が硬くて動きにくい状態であれば、肩甲骨と股関節が連動して働きにくくなります。

これは、簡単な実験によって体感できます。例えば、肩甲骨・股関節を動かす体操を行います。そこで、あおむけに寝て、「体をひねる動作」を行ってください。肩甲骨・股関節を動かすと、何もしなかったときに比べて、「体をひねる動作」が行いやすくなります。

しかし、ここで腰方形筋をさらにゆるめると、より「体をひねる動作」が行えるのです。ストレッチポールを肋骨と骨盤の間に入れて、あおむけに寝てください。そして、その状態で体を揺らしたりしましょう。

その後に、再度ひねり動作を行いましょう。すると、先ほどに比べてさらに身体をひねることが体感できたと思います。

「ひねる」動作は、野球・サッカー・陸上など、様々なスポーツで行われます。何年も続けていくと、身体の衰えを体感します。その「衰え」とは、身体の動きのキレであり、体の動き出しが速さや体力です。その状態から、肩甲骨・股関節周りの筋肉を鍛えたり、ゆるめたりすると、腕や脚が動かしやすくなり、さらに腕・脚の付け根が連動して動くようになります。これを「肩甲骨―股関節の連動」とも表現されます。

しかし、本質的には「腰方形筋」をゆるめるのが、早いと考えております。「腰方形筋」は、体幹部を柔軟に動かすために必要な筋肉です。腰方形筋を緩めると、肩甲骨・股関節が連動し、さらに深く手脚を動かせられます。また、内臓疲労の観点からも、腰方形筋をゆるめることが先であると考えられます。

肩甲骨・股関節より先に腰方形筋が凝る

肩甲骨周りには「肺」「肝臓」、股関節周りには「大転子」があります。確かに、こうした内臓器官もストレスによって疲弊するかもしれません。ただ、「内分泌系からホルモンを生産する」ことは、人にかかったストレスに最も早く対応できる方法です。腰方形筋は副腎と腎臓が近くに位置しています。加えて、副腎と腎臓は現代で最もストレスがかかりやすい器官であり、肩甲骨・股関節より先に硬くなりやすいです。そのため、優先的に緩めたいのは腰方形筋です。

例えば、私の教えているクライアントの中には、肩甲骨・股関節が非常に柔らかい方が数人いました。しかし、腰方形筋を指圧し、柔らかかった方は100人以上確認し、2人しかいませんでした。その中には、開脚が驚くほど柔らかいのに腰方形筋を指圧すると、痛がる人もいました。つまり、それだけ多くの人が腰方形筋に凝りを抱えており、その影響は「副腎」が疲労しているからと考えられます。

副腎が疲労しているのは、身体がストレスによって疲労している状態です。つまり、腰方形筋が硬くなっている状態です。その身体でいくら肩甲骨・股関節を動かすようにトレーニングしても、うまく二つの部位が連動して動かず、スポーツ技術向上につながりにくいのです。

そのため、これまでの内容をまとめます。

・ストレス社会において、現代人は内分泌系から発生するホルモンによってストレスに打ち勝とうとする

・その際に、副腎から発生するホルモンでストレスに対抗しようとする

・ストレスが積み重なると、副腎が次第に疲労し、副腎周りの筋肉が硬くなってくる

・副腎が硬くなることで、「腰方形筋」が緊張する

・体幹部を前に屈む、後ろにそらす、左右に傾ける、ひねるといった動作がしづらくなる

・肩甲骨、股関節が連動して働かなくなる

・スポーツ動作に影響が出る、普段の仕事にも支障が出る

以上の内容により、肩甲骨・股関節周りの筋肉を鍛えたり、動かしたりしてもスポーツ技術が向上しないのがわかります。なぜなら、現代社会でストレスがかかった際に、「腰方形筋」が凝ってしまうからです。

そのため、1章の最後で紹介した腰方形筋の活用法、あるいは体操法を実践してみるようにしてください。実際に行うとわかりますが、腰方形筋が緩むと、全身の筋肉がゆるみ、体が軽くなった感触を得られます。今後、スポーツの技術を向上させるには、必ず「腰方形筋」」の使い方を身に着けるようにしてください。

 

 

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