「言詮にとらわれる思考」を回避し、スポーツで最大限に体を活用する方法

「言詮にとらわれる思考」を回避し、スポーツで最大限に身体を活用する方法

スポーツの世界で、「基礎」「基本」と呼ばれる動作やフォームがあります。例えば、水泳の世界では、水中姿勢の基本として「ストリームライン」があります。 ストリームラインとは、水の上で両腕をしっかり伸ばして頭を伏せた姿勢のことを指します。

ストリームラインを作るときは、「顎が上がらない」「腕が緊張しない」といった注意点があります。そのため、指導者の中には「ストリームラインを意識しましょう」「水泳では、ストリームラインを作ることが先だ」とお話されます。

ただ、このように「基本の姿勢」が知られていたとしても、すぐに作れるわけではありません。むしろ、このような「基礎」「基本」といった言葉にとらわれすぎてしまい、かえって身体が満足に動かすことができず、スポーツ技術がしてしまうこともあります。

その場合、基礎や基本を意識することより先に、「あまり言葉にとらわれない」ことが大切です。基礎知識を伝え、基礎的な内容を伝えるのではなく、先に「上半身の力みを取る」「骨盤の角度を正す」といったことを行うようにします。

つまり、基礎や基本より、個々の骨格の状態や体の使い方に目を向けるのです。それによって、あなたのスポーツの技術は確実に向上できます。

今回は、水泳の「ストリームライン」を例に、スポーツで基礎や基本の動作にとらわれすぎない重要性について解説していきます。

「基礎」「基本」の言葉にとらわれると、体は思うように動かせなくなる

例えば、ストリームラインを作りましょうと指導をしたとします。水泳自体に慣れている方であれば、すぐにこの構えができます。しかし、水泳が苦手な方にこの内容を行おうとすると、あらゆる障害が起こります。

具体的には、ストリームラインを作ろうとすると、かえって泳ぎにくくなり、余計に疲れてしまうのです。ストリームラインで言われる型に無理やりはめこもうとすると、腕が力んだり胸が前方に出たりといった問題が出てくるのです。つまり、基本動作をするつもりが、かえってプールで泳ぎにくい姿勢になってしまうのです。

弓道の世界ではこのことを「言詮(言葉)にとらわれる」といいます。つまり、言葉にとらわれるあまりに、不合理に身体を動かしてしまい、かえって運動技術の低下や怪我をまねてしまうのです。実際に、言葉によって受ける身体の影響は強いです。そのため、指導者も勉強する側もきちんとその真意を理解しないといけません。

例えば、先ほどのストリームラインを意識して、泳ぐように指導したとします。すると、受け手はその「ストリームライン」という言葉から、「腕を伸ばす」「背筋を真っすぐに伸ばす」といった意識をするようになります。

もし、水泳に慣れている人の場合、「腕を伸ばす」「背筋を伸ばす」という言葉だけで頭で行うべきことが自分でイメージでき、すぐにできます。しかし、水泳が苦手で、知識がない人の場合、これらの意識が泳いでいる最中に上半身全体の力みにつながり、泳ぎにくくなってしまうのです。

このような現象は水泳以外にも、さまざまあります。野球の世界では、「スイングの基本はダウンスイング・ピッチングの基本は腕と耳をできるだけ近くする」といった基本があります。この基本動作を忠実に行うばかりに、「スイングで胸が早く開いてしまう」「ピッチングで肘が痛くなる」といった問題が起こることがあります。

ランニングでは「走る際は、腕をしっかり振る」といった「基本」があります。この基本動作を意識しすぎたあまりに「肩に必要以上に力が入る」問題が出てしまうことがあります。

すべてのスポーツの「基本」を聞いたわけではありませんが、どのようなスポーツにも「基本」はあります。しかし、「基本動作」を先に求めすぎるあまりに、身体がかえって動かせない場合があります。

その場合、「基本」を一度横に置いて、まず「思ったように身体を動かす」ことを最優先します。そのあとに、基本動作を勉強し、スポーツに取り入れるようにすればよいのです。

最初に「上半身の力みを取る」「骨盤を垂直にする」ことを行う

では、スポーツで「思ったように身体を動かす」にはどうすればよいでしょうか?全てとは言いませんが、ほとんどすべてのスポーツで「上半身の力みを取ること」「骨盤の垂直に正すこと」を意識させると、体が動かしやすくなるのがわかっています。

「上半身の力みをとる」とは、具体的に「腕」「胸」の力みを取り去るようにします。「骨盤を垂直に正す」とは、そのスポーツをしている最中に起こる骨盤のゆがみを矯正するように意識するのです。

実際に、私の教えているクライアントの中に、水泳経験者がいました。その人は、「泳いでいる最中にストリームラインがとれていない、体の軸がぶれてしまう」という悩みを持っていました。

そのときに、私は「上半身の力みが出ている」から「軸がぶれている」悩みにつながっていると仮説を立てました。そして、悩んでいる方に、水の中で上半身の力みを取る身体の使い方をさせます。泳いでいるときに、腕を突っ張らせていたので、少し曲げさせるようにしました。

さらに、その方は骨盤が前傾しやすい方であったため、おなかをへこませるように指示し、少しみぞおちを身体の内側に入れるように指導しました。最初はストリームラインとかを全く気にさせず、腕を少し曲げた状態にして泳ぐように指導しました。

すると、この二つを行っただけでも、水泳の泳ぐ距離が格段に上がったというのです。さらに、息継ぎ、他の泳ぎができるようになり、最終的にはストリームラインを行えるようになりました。

つまり、ストリームラインを構築する前に、「上半身の力みを取る姿勢」「力みにくい腕の動かし方」を先に教え、結果として、ストリームラインを構築できるようになったのです。

このような考え方は、野球の世界でもあります。野球の世界では、「ダウンスイングをしましょう」「身体の重心を下げるようにしましょう」などの基本の教えがあります。しかし、このような基本を先に重視すると、「脚に力が入る」「体が無駄にねじれてしまう」といった問題が生じます。

そこで、このような基本より先に、「軽く膝を曲げる程度にする」「腕の力みを取るために、トップの位置を変える」ことを先に行います。

このようにスイング動作を積み重ねていくと、無駄な力なく、腕を振りぬくことができます。すると、素振りの数やスイングスピードが向上し、最終的にはダウンスイングでも良いバッティングができるようになってきます。

つまり、水泳や野球にしても、スポーツで先に「基本」を理由もなく教えてしまうと、かえって悪い方向に進んでしまう場合があります。基本動作に無理に当てはめようとして、かえって力んだ体の使い方をしてしまうからです。

弓道の世界では、まず先に本人の身体にはまるように体の動きを指導します。この考え方は弓道の動きだけではなく、スポーツ・健康・医療にも通ずるものと考えています。そのため、あなたが行っているスポーツがあれば、基本動作よりも「骨盤を垂直に正す」「上半身の力みを取ること」を優先的に行なうようにしましょう。

上半身の力みを取るには?骨盤を垂直に正すには?

骨盤を垂直に正す際に、私がよく使う意識の仕方について解説します。自分の行っているスポーツの中に当てはめてみましょう。

 

上半身の無駄な力みをなくす方法

①「首を伸ばし、両肩を落とす」ことで、背骨を真っすぐに正し、動いている最中にこの状態が崩れないようにする

②腕に力を入れない、そのためにできるだけ身体の近くに腕を近づける

③動作において「腕・手首」を意識させないように体を動かす

④腕を動かすときは「脇下の筋肉」、脚を動かすときは、「腰・腹」を動かすようにする

⑤なるべく特定的・限定的な表現・言葉を意識しすぎない

⑥させないようにする腕や脚に力を入れず、なるべく胴体部から中心に動くようにする

⑦目に力みを入れないようにし、ぼんやり見るようにする

⑧特別な言葉やわかりにくい表現はできるだけ避ける

①~⑧を意識づけることで、スポーツ動作中に骨盤がずれ

ずに、上半身に力みなく動作を続けられます。

 

骨盤を垂直に正す方法

首の後ろを伸ばす(顎が前に出ると、胸部も出てしまい、骨盤が前に傾く)

①両肩を落とす(肩の筋肉を落とさないと、首から肩にかけて存在する「僧帽筋」が力む、すると、胸の筋肉も力んでしまい、胸部の前方のずれ、骨盤のずれとつながってしまう)

②おなかをへこませる(腹横筋がゆるむと骨盤が前や後ろに傾く)

③お尻をしめる(お尻を占める大臀筋・梨状筋がゆるむと、骨盤が前傾く)

④膝を少しだけ曲げる(太ももの裏側、内側にある筋肉が張りすぎてしまい、骨盤が前に傾くのを防ぐ)

①~⑤の内容をあなたのスポーツに取り入れることで、常に骨盤が垂直に保たれ、ムリな動きが軽減されます。

これらの原理をもとに、スポーツの指導や勉強をしていくと、身体の動かし方や考え方が変わってくるでしょう。そして、結果として、基本動作を無理なく習得でき、実力をさらに伸ばしていくことができます。

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