多くの人は「走り方」を言われると、「腕の振り方は〇〇」「肩甲骨・股関節を使って…」などと想像します。つまり、体の大きな部位に注目しがちです。しかし、腕をしっかり振り、肩甲骨と股関節を効果的に活用したければ、「指」に注目してください。
「指の使い方を変える?」「どういうこと?」と思うかもしれません。しかし、指の握り方を変えると、体の重心の位置が変わり、腕の振り方が変わります。少し、指の握り方を変えるだけで、もっと楽に走ることができます。
本記事では、ランニング時に姿勢の崩れず、かつ効率よく筋肉を働かせる指の握り方について解説していきます。
ランニングにおける、適切な指の状態を解説
指の握り方といっても難しく考える必要はありません。ずばり、先にお話しすると
・人指し指、親指の力は抜く
・小指、薬指の力を入れる
二つの状態を意識して走ると、肩の力みが少なくなり、走りやすく感じます。
人差し指と親指に力を入れると、肩に力が入りやすくなるのがわかります。二つの指は腕や肩の筋肉にまでつながりを持っており、握ることで連動して肩が力みます。
親指は腕の筋肉にある「橈骨筋(とうこつきん)」とつながりがあります。この筋肉が張ることで、腕が曲げるための上腕二頭筋も連動して張り、肩の筋肉が張ります。そのため、人差し指の力は抜いたほうが良いです。
次に、「小指と薬指」に力を入れると、肩関節を下方に下げやすくなるのがわかります。小指と薬指は、腕の裏側から脇下にかけての筋肉とつながりをもっております。
ランニングでは、肩の力を抜くと、走りやすさやスピードが変わります。肩の力を抜くことで、肩甲骨がより動くようになり、姿勢も安定するからです。そのために、人差し指と親指の力を抜き、薬指と小指に力を入れるようにしてください。
じゃんけんでわかる指に与える姿勢の影響
このように、人差し指の力を抜いて、小指・薬指の力を入れた方がよい理由は他にあります。この指の形が最も重心の位置が安定するからです。このことを理解するために、じゃんけんの手の形で姿勢の重心が変わることを解説します。
じゃんけんにはグー、パー、チョキの3種類があります。この三つの手の形によってそれぞれ走っているときの体の重心(体重が乗る場所)が変わります。
グーの形で走ると、体の重心は前に傾きやすくなります。その結果、姿勢は前にかがんだ姿勢になってしまいます。グーの形で腕を振ると、自然と肘が曲がりやすくなり、腕の筋肉に力が入ります。そうなると肩が上がり、上半身の肩周りが縮んで姿勢が曲がってきます。
次に、パーの形で走ると、体の重心は後ろに傾きやすくなります。パーの形で腕を振ると、自然と肘が伸びやすくなります。肘が伸びると腕の振られる力が大きくなり、両肩がぶれます。走っているときの空気抵抗を受けているうちに肩は後ろに引かれ、自然と姿勢が反ってしまいます。
最後にチョキの姿勢で走ってみましょう。チョキの形を作るとき、親指を開いてもかまいません。この姿勢で走ると、上半身が反ったりかがんだりしません。手の形の中では、でチョキが一番体の姿勢が崩れにくいです。
これは、チョキの形は小指、薬指を使うからです。二つの指を握ると、腕の裏側と脇下の筋肉に力が入り、両肩が後ろに引けにくくなります。てのひらをパーにして歩くと、上半身がゆらゆら左右にゆれる感覚です。一方、小指と薬指を握ると上半身が揺れません。
グー、パーの姿勢は立っているだけでも姿勢が曲がりやすいため、二つの姿勢はとらないようにするのをお勧めします。このために、チョキ(人差し指・親指の力を抜き、小指・薬指の力は入れる)の形が走りの姿勢も安定しやすいといえます。チョキの形で走ると余計な力みや姿勢の崩れが防げて、走ることができます。
小指・薬指を握ると、腕振りがしやすくなる
さらに、小指と薬指を脱ぎると、少ない力で腕振りもしやすくなります。
例えば、てのひらをパーにした状態で手首をブラブラしてみてください。このときは、体周りに何も力が入りません。なぜなら、てのひらがパーになっているため、末端部で力が分散されてしまうからです。
次に小指と親指を寄せて、手首をブラブラしてみてください。すると、腕以外に胸周りや脇周りの筋肉も一緒に動いていることがわかります。これは、小指と親指を寄せることで末端部が固定され、力がまとまるからです。
そして、小指と薬指を握った状態で腕を振ると、複数の筋肉が活用されるため、「腕を楽に振りやすい」と感じるでしょう。このように、軽く二つの指を握ることで、ランニングにおける「余計な力み」「重心の状態」「腕振りの状態」などが改善されます。
弓の世界で一番力を入れたくない指とは
弓の世界で極力力を入れたくない指が人差し指です。
なぜなら、人差し指を握ると、人差し指側の腕の筋肉に力が入るからです(ここでは、上筋と表現します)。小指と薬指を握ると、小指側の腕の筋肉が動きます(下筋と表現します)。
上筋に力を入れると、肩関節の筋肉に力みが生じて、弓を最大限押し開けなくなります。腕が突っ張って最後まで弓を押し開けない状態になってしまいます。
このように、弓を押している最中に姿勢を崩さないようにするために、人差し指に力を抜き、小指を握った構えで弓を引きます。ランニングでも同様です。良い姿勢で走りたいなら、手の形をチョキにしてみましょう。これを実践するだけで、快適に走れることを実感できるはずです。
弓道で指の使い方が重要なのと同じように、ランニングでも指の形を変えるだけで、より負担のない効率良い走りを身に着けることができます。