ランニングする際に、膝を怪我する「ランナーズニー」を患う人はよくいます。この痛みは、一度かかってしまうと、なかなか直らないストレスのかかる怪我です。
実際に、ランナーズニーにかかり、医師に症状を診てもらうと。
「膝周辺の筋肉の使いすぎですね。いったん休ませましょう。湿布薬をお渡ししておきますから」
と言われます。確かにそうですが、結局休んだとしても、再度運動を開始すると膝が痛みだします。そのため、思い切って走ることができなくなります。
こういう場合に備えて、膝をケアする方法を学んでおきましょう。と言っても、ランナーズニーを直すのは簡単です。原因は「姿勢」から来ており、自分でのケアで十分に対処できます。以下に、自身の体験談も踏まえて、「ランナーズニー」の直し方について解説していきます。
前傾姿勢になると、膝は痛む
結論から言うと、ランナーズニーになってしまう原因は「前傾姿勢」です。骨盤が前に傾いて、その姿勢が続くと膝が痛くなります。もう少し、詳しく書くと「腰椎2・3番目」がずれることで、膝関節に痛みを感じやすくなります。
腰椎とは、背骨の中で腰の部分にあたる骨を指します。その中で、腰椎2・3番目は、肋骨の下部(自分で背中を触り、肋骨の出っ張っている箇所)から親指3本程度下方に下がった場所にあります。
実際に触ってみましょう。自分のみぞおちあたりを触り、そこから手を背中側に動かしていくと、細長い骨を触れます。この骨が、肋骨の中で一番下に当たる骨になります。この骨の位置から親指2、3本下に移ると、「腰椎2,3番目」の場所になります。
この部位の骨と神経学的に関連する部位として膝関節があります。腰椎2・3番目と膝関節は神経系としてつながりがあり、腰椎2・3番目がずれると、膝関節に影響が出るのです。
生活や運動中に、姿勢不良によって「前傾姿勢」になったとします。すると、腰椎2・3番目が前方にずれ、膝関節につながる神経が圧迫されます。この状態が続くと、膝関節の神経伝達に悪影響が起こります。後に、脳から痛み物質として、ヒスタミン・ブラギニンが流れ、痛みを感じるのです。
これは、側面・後ろ面であっても同様です。腰椎は1~5番までありますが、それらすべてが膝関節とつながりを持っています。つまり、骨盤が前傾することで、膝が痛むといってもいいでしょう。骨盤が前傾することで、膝関節に関係する神経が圧迫され、痛みが発生するのです。
なぜ、ランナーは膝の外側が痛むのか?
その中で、ランナーが特に膝の外側が痛みやすい理由として、「膝関節外側の筋肉が内側に巻かれるから」です。
通常、走っているときのフォームとして、両足先の向きはほぼ直線に向きます。これは、体の重心を前方に動かす運動をスムーズにするためです。その中で、より体の重心を前方に送るために、骨盤を前傾させて走ります。このように、骨盤を前傾させると、太ももが内に向きやすくなります。
すると、膝関節で「ねじれ」が起こります。足先を直線に向けて骨盤を前傾させると、太ももの骨が内側に入りすぎてしまい、足先と膝関節の向きが合わなくなります。
太腿外側には、「外側広筋(がいそくこうきん)」と呼ばれる筋肉があります。この筋肉は膝を伸ばす働きがあります。
太ももの骨が内に向けると、太もも外側にある「外側広筋(がいそくこうきん)」が内側に引っ張られます。そうして、太腿側面にある神経が引っ張られてしまい、外側広筋の筋肉が凝ります。
その結果、痛むのです。痛みとしては、着地衝撃がかかるたびに「ジンジン……」と響くような痛みが起こります。
実際に、私も右膝外側を痛めたことがあります。足先を真っすぐに向け、骨盤を前傾させて走り続けた結果、膝関節外側の外側広筋が張り続け、痛みが起こりました。下の写真のように、膝と足先の向きが明らかにあっていない人は気をつけたほうが良いでしょう。走り続けると、膝関節が内向きに入りやすくなって、膝の外側が痛みます。
休んでも膝の怪我が治らない理由
ここまでの話をまとめると、
・前傾姿勢になって背筋が張ると膝が痛む
・太ももが内向きに向くため、特に外側の筋肉が内側に巻かれやすい
・外側に位置する神経が圧迫されるため、痛みが起こる(ランナーズニー)
このような経路で痛みが起こります。つまり、膝の痛みは、膝周辺の筋肉を使いすぎではなく、姿勢不良(前傾姿勢)が本質的原因です。
練習をやめて休憩しても痛みが取れない理由は、骨格のゆがみがとれていないからです。つまり、関係する筋肉をゆるめて神経の圧迫を取ると、ゆがみが解消されて痛みがなくなります。
マッサージや鍼治療を行っても治らない理由
ランナーズニーの痛みを解消するために、マッサージや鍼治療に行く人もいますが、こうした機関に行っても、根本的に改善できるとは言えません。
マッサージや鍼治療を行って、詰まりや硬くなった筋肉をゆるめるところまでは良いが、根本的に改善するためには、適切な「姿勢(骨盤の状態)」を覚えないといけません。筋肉をもめば、緊張した部位をゆるめられます。しかし、走っているときに再度前傾姿勢になってしまえば、外側広筋に負担がかかり、また痛くなります。
これは、鍼治療でも同様です。鍼治療を行うと、硬くなった筋肉がゆるみ、痛みが取れます。しかし、その状態を維持するためには普段からの身体の使い方・姿勢を変えないといけません。
具体的な治し方を解説する
では、膝周辺の痛みを改善する具体的手法について解説していきます。 行うことは、「骨盤が垂直に立つように、筋肉をゆるめる」ことと、「走り方の意識」を変えることです。二つのことを行い、怪我せずに走れるようになりましょう。
まず、骨盤を垂直に立たせるために、「腰方形筋(ようほうけいきん)」と、「外旋筋(がいせんきん)」をゆるめるようにしてください。二つの筋肉は、骨盤を垂直に立たせ、姿勢の調整に役立ちます。
腰方形筋は、先ほどお話しした「腰椎」付近にある筋肉です。前傾姿勢を取ると、腰方形筋が凝り固まっています。一方、外旋筋は締まることで骨盤を立てる役割を持っています。しかし、硬くなってしまうことで、締まらなくなると、骨盤が前に傾いてしまいます。
そこで、二つの筋肉をほぐして、骨盤が自然と立つようにしましょう。
腰方形筋・外旋筋のほぐし方:ヨガのポーズを覚えて毎日行う
手っ取り速い方法がヨガのポーズでゆるめることです。ヨガのポーズとして、オススメなものが「アーチのポーズ」「弓のポーズ」です。この二つを自分のできる範囲で行ってください。
写真のように完璧にできる必要はありません。弓のポーズであれば、うつ伏せに寝て、両手で足がつかんで、そらせるだけでも効果があります。アーチのポーズでは、背中全体が挙げられなければ、初めは肩がついた状態でもいいのでポーズをとるようにしてください。
二つのポーズを行うと、背中からお尻にかけての筋肉が両方張るのがわかります。このポーズを繰りかえして、二つの筋肉をゆるめるようにしてください。
そして、二つのポーズが終わったら、「指圧」によってゆるめるようにしてください。15センチ程度のポール、棒状のものを用意します。次に、ポールを肋骨と骨盤の下に置いてあおむけに寝ます。後は体を左右に動かしてみてください。これによって、「痛気持ちいい」刺激を得られることができます。
このように、指圧することで、筋肉の奥底にある「腰方形筋」に関係する神経にも刺激が入ります。ポールを背中に当てて、間接的に神経に圧力をかけます。すると、ストレスによって、詰まりが出ている神経がほぐされて、詰まりがとれてきます。これにより、効率よく筋肉をゆるめられます。
走るときの走り方の意識も変えてみよう
次に、走る際に、「余計なことをしない」ように意識してみましょう。
例えば、ランニングの書籍を開くと、重心移動を楽にさせるために、「上体を前に倒すように走る」という情報があります。しかし、膝を痛めてしまった場合、このように意識しすぎないようにしましょう。
ランニングでは、「効率よく速く走れる方法」を意識しても早く走れない場合があります。それよりは、基礎練習を多く繰り返し、ペースを落とさないようにしましょう。
ただ、長年ランニングを行っていると「ほとんどのスポーツは前傾姿勢で行うので、前傾姿勢はよいのでは?」と思うかもしれません。ある程度は確かに伸びます。しかし、高いパフォーマンスをさらに引き出したいと思ったら、前傾姿勢を疑うようにしてください。
実際に、私も「前傾姿勢が正しい」と思い込んで練習をしていました。それでハーフマラソンの記録も伸びたこともあり、フルマラソンの記録もある程度のところまで伸びました。ただ、長い競技の場合は太ももの裏側が必ずつりm30km以降はペースが大幅にダウンしてしまう悩みを持っていました。
今は、首の後ろを伸ばすことを維持すれば、無理に前傾姿勢を取らなくても同じくらいのスピードが出ることがわかりました。今は、フルマラソンのタイムは大幅に向上し、ハーフマラソンも全盛期のころと近いタイムをコンスタントに出せています。
会社員時代、独立の準備をしていたとき、全くマラソンの練習ができませんでした。そのときでさえ、前傾姿勢をやめて走るようにして、ケガをせず3時間10分近くでゴールし、脚もつりませんでした。加えてハーフマラソンでも1時間25分以内で完走しています。
この経験より、「無理に前傾姿勢にしなくてもいい」と考えております。もし、走り続けて怪我をしてしまった場合、前傾姿勢が原因である可能性は高いです。自分の腰方形筋肉と外旋筋を疑ってください。おそらく、凝り固まっている可能性があります。
走っているときに膝が痛くなる理由は、前傾姿勢になりすぎて、膝の外側に負担がかかっているからです。腰とお尻の筋肉をゆるめて、膝の負担をなくしましょう。
さらに「走り方の常識」を転換することで、ケガを予防しながら速く走れます。次の記事では、「本に書かれた走り方の情報と反対のことを行うと速く走れる」理由について解説していきます。