首の後ろを伸ばすと持久力が向上する
「首の後ろを伸ばす」身体使いを意識することで、スポーツにおいて様々な効用を得られます。その中に、「持久力の向上」があります。
持久力を伸ばす方法として、「LSD(長い距離をゆっくり走るトレーニング)」などがありますが、トレーニング以外に「走るときの姿勢」も重要です。
もし、普段マラソンなどの持久系のスポーツを行っている場合、バスケ、サッカーなどでスタミナを向上させる場合、走るときに「首の後ろ」を伸ばし続けるようにしてください。それによって、持久力を伸ばすことも可能になります。
その理由について以下に解説していきます。
腕・脚に力を入れず、首の後ろを伸ばすことを意識し続ける
長時間走る際に気をつけたい内容は二つあります。
・できる限り腕と脚に力を入れない
・首を伸ばし続ける
上記二つのことをして、ジョギング動作を行ってください。もし、あなたが走っている最中に「腕を振る」「脚を付け根から動かすようにして前に出す」「肩甲骨・股関節を意識する」といった意識を持っていたら、それらを一旦やめてください。とにかく「腕に力を入れない」「首を伸ばし続ける」ことを意識し続けてください。そして、なるべくペースは一定に、かつゆっくりのペースを保つようにします。
フルマラソン経験者であれば、LSDを楽にこなせるのを体感できます。さらに、トライアスロンなど長い距離を走る方であれば、後半になってもスタミナが残り、脚に疲労が少ないことが体感できるでしょう。
これには理由があります。
長時間走り続けるには「副交感神経」「心肺機能」の働きを安定させる
長時間走り続けるには、持久力を向上させるトレーニングも必要です。しかし、実際に持久力を伸ばすためには「落ち着いて走り続ける」意識も大切です。
人の背骨には、興奮時に働く交感神経と安静時に働く副交感神経があります。試合中で緊張する場面などで、体に力を入れるときは交感神経が過剰に働きます。短期的に瞬発力を発揮させたいのであれば、交感神経が働くのが適しているでしょう。しかし、長時間走り続けるためには、交感神経の働きを抑え、副交感神経を働かせるようにして、バランスをとっていく必要があります。
その理由として、長時間走るために、心肺機能が過剰に働く必要はなく、むしろ無駄に心肺が働いてしまうのは致命傷になるからです。
外からの影響によって、緊張したり力を入れようと意識したりすると、交感神経が過剰に働き、心拍数が多くなってしまいます。これによって、スタミナが消費され、走る際の体力低下につながります。
こうした交感神経と副交感神経の働き(自律神経系)のバランスは「頸椎一番目(後頭部のへこみ部にある首の骨)」と深く関与しています。心拍数を調整するとき、気持ちを落ち着かせるとき、脳がその意識を認識して、背骨にある神経を介して内臓・筋肉に指令や刺激を伝えます。
例えば、気持ちを落ち着かせたいのであれば、副交感神経が働くように脳から指令や信号が送られます。この指令によって、「血管が拡張する」「血流速度が遅くなる」「心拍数を遅くする」「胃袋の活動が活発になる」といった反応が起こります。
しかし、こうした反応も運動中の姿勢が悪い場合、うまく機能せず、自律神経系の働きが崩れます。すると、運動中における感情の起伏や筋肉の緊張が大きくなり、持久力が低下するのです。
まず、首を伸ばすことを第一優先にします。すると、走っている最中に顎が前に出にくくなり、首の骨に無駄なねじれが少なくなります。すると、頸椎1番目の骨が圧迫されることなく、動作を続けられます。これによって、交感神経と副交感神経の働きのバランスを保ちながら、走り続けることができます。
腕を必要以上に振りすぎない方が長く走れる
そして、長い距離を走る場合であれば、腕を振る気持ちも極力なくす走り方が適しています。その理由として、腕を振ろうと意識しすぎると、心拍数が無駄に多くなってしまう危険があるからです。
肩甲骨周りには、心肺に関係する筋肉が多く存在します。「腕を振る」「肩甲骨を意識する」といった意識をして、これらの筋肉を使おうとすると、心臓周りの筋肉が動きすぎてしまい、心拍数が向上する可能性があります。
もし、長い距離を走りたいのであれば、できるだけ心拍数を抑えて、ゆったりした気持ちで走る方が大切です。そのため、できるだけ心臓に負荷をかけないようにするために、「腕を振る」「肩甲骨を意識する」といったこともやめるようにしましょう。
江戸時代の走り屋でさえ、走るときの気持ちを大切にしていた
実際に、古くの日本人は走るときのリズムや意識を大切にしていたとされています。江戸時代に走りによって情報伝達の仕事をしていた「飛脚」は「走る際のリズム」を大切にしていました。着物の替えを持ち、途中で着替えることで走る際のコンディションを一定に持たせたり、小石を踏まないように気をつけたりといった工夫をされていたと書籍に記されています。
つまり、仕事で長い間走り続けるためには、気持ちを安定させて走ることを第一に考えていたことがわかります。現代では、走る際の「姿勢」、つまり感情や情緒に関係する頸椎一番目、首の後ろが重要であると考えています。
首の後ろを伸ばし、胴体のぶれを抑える
さらに、首の後ろを伸ばすことで長時間走れる理由として「胴体のぶれが少なくなる」ことが挙げられます。首の後ろを伸ばすと、横隔膜が上に引き上げられるため、結果として骨盤が垂直に立ちやすくなります。これにより、お尻周りにある「大殿筋」が締まり、股関節の付け根と脚の付け根が密着します。すると、胴体と脚が一体物のように連動して動きやすくなります。
人は顎を上げて、首の後ろを縮めた姿勢をとると、骨盤が前傾しやすくなります。この反応を「頸反射」と呼ばれ、顎を浮かせるような姿勢をとると、背骨全体が反るように自然と動きます。このように、骨盤が前傾すると、股関節と付け根と太ももの付け根に隙間が出きてしまうため、動作中に脚と股関節は別々に動いてしまいます。すると、動きに無駄なロスが多くなり、スタミナの消耗につながってしまうのです。
長時間走り続ける際には、いかに無駄な動作を減らすかが鍵になります。実際に、首を伸ばし、両肩を落とすことを意識し続けると、余計な意識が少なくなり、動作中に「無駄な動き」が少なくなって「気持ち」に余裕が出てくるでしょう。それによって、長く走るためのスタミナが向上します。
このように、スタミナを向上させるためにはトレーニング以外にも方法があるのがわかります。その中で、「感情の調節」に関係する「首の後ろ」は大切であるとわかります。感情や動きの無駄がなくなると、通常のトレーニングより何倍にも、持久系のパフォーマンスを伸ばせるのです。