仕事中や休みで「脚のだるさ」に悩まされることはよくあります。「立っていると脚が疲れてくる」「スポーツで脚の怪我が多い」「膝・足首が痛い」といった悩みは、脚に疲れが出ている証拠です。
現在、当健康所ではその人に合わせて痛みの改善法について提案しています。その中でわかってきたことが、「生活習慣によって脚の痛みの原因は変わってくる」ことです。座っている人や立っている人で凝りやすい筋肉が異なり、それによって痛みを取り去るために必要なことが違ってきます。
弓道の世界では、個々の骨格や体格に合わせて、適した弓の引き方や姿勢の意識の仕方を分けて説明します。これと同様に、脚の痛み(膝・足首の痛み)の原因も、生活スタイルから異なることを理解し、具体的な改善法を考えていく必要があります。
そこで、今回は生活習慣によって異なる脚の痛みの解消法について解説していきます。
脚の痛みの原因:外旋筋の筋力低下から起こる
脚の痛みが起こる大きな原因として「外旋筋の筋力低下」が挙げられます。外旋筋は「太ももを外に開く筋肉」を指し、お尻周りにある大殿筋・梨状筋などが挙げられます。これらの筋肉が低下することで、脚のだるさや痛みに悩まされます。
その理由として、外旋筋が低下することで、太ももが内向きに入りやすくなり、太もも裏、背中といった体の後ろ側の筋肉が張ってしまうからです。この張りが続くことで、脚の疲労感、膝や足首の痛みにつながります。
外旋筋は日常生活において、あらゆる要因で凝り固まります。座り作業中心で仕事をしていると常にお尻は圧迫され続けるため、外旋筋が硬くなっていきます。さらに、立っていることが多い人やジョギングをしている人であっても、外旋筋の筋力は落ちていきます。
立った状態やジョギング動作が続くと、常にお尻の筋肉を使い続けることになります。すると、外旋筋の活動に必要な体液が多くなります。外旋筋に流れた体液は最終的に体外に排出されますが、必要量が多くなってしまうと、古い体液として残ってしまうものが出てきます。
古い体液が外旋筋に積み重なると、必要な栄養素がいきわたりにくなり、結果として筋肉が伸び縮みしずらくなります。この状態が続くと、「痛み」や「だるさ」が生じます。つまり、座っている人でも立っている人でも、外旋筋は凝りやすい筋肉であるといえます。
古来弓道の文献では、適切に弓を引くために、「肛門を締める(=外旋筋をしめる)」ことを強調した文献があるほどです。弓道では、お尻を締めて、内ももが少しだけ締めるようにし、弓を引きます。しかし、日常生活やスポーツの世界では、このような筋肉の使い方を学ぶことがありません。
そのため、あなたが脚の痛みやだるさに悩まされてしまった場合、外旋筋の低下を疑うようにしましょう。
外旋筋が衰える要因:普段の姿勢不良
そして、外旋筋が低下する要因として、普段の「姿勢」が挙げられます。そして、姿勢不良によって起こる外旋筋の低下は「座っている人」「立っている人」「運動している人」によって異なります。それぞれの痛みが起こる経路が異なるために、自身の生活習慣と照らし合わせて考えるようにしてください。
座っている人の場合
現代人で座った姿勢によって、外旋筋が凝ってしまうことが多いです。座り作業とは股関節が屈曲している(太ももの付け根が骨盤に対して、垂直に曲がっている状態)状態です。この姿勢は、太もも周りの筋肉の血管が圧迫されるため、太ももの筋肉が凝りやすいです。これに関連して、お尻を締める筋肉が凝ってしまいます。
あるいは、脳に過剰なストレスがかかることで、太もも周りに流れる血流が低下しています。普段の仕事で「締め切り」「成果」などに追われていると、過剰に脳に栄養を集め、思考しようとします。すると、脳の命令によって各臓器に血液を流す反応(脳シグナル)がうまく流れなくなります。結果として、下半身へうまく血液や栄養が流れにくくなり、外旋筋に詰まりや凝りが発生します。
♣座っている人の場合⇒太もも周りの血流低下、「脳」シグナルの異常による外旋筋の低下 |
立っている人の場合
立った姿勢が続いてしまうと、小腸の位置が通常より、下に垂れ下がりやすく(下垂しやすく)なります。この影響によって、太ももの付け根にある腸腰筋が凝ってしまい、その影響として骨盤が前傾します。
小腸が下垂する現象は太っている人に起こる現象といえます。立っている人の場合、立つという行為そのものが、小腸を下垂させることにつながります。これによって、骨盤が前傾したときに凝る筋肉と同じ筋肉が硬くなりやすくなります。そうして、お尻を締める筋肉が伸び縮みしずらくなり、外旋筋が低下します。
♣立っている人の場合⇒内臓下垂による腸腰筋の凝り |
スポーツを行っている人の場合
外旋筋は「走る」「ジャンプする」といったスポーツ動作で活用されます。ただ、ジョギングやバスケを行ったとして、筋肉を緩めることをしなければ、外旋筋を締める力が低下します。
人は前方に進んだりジャンプ動作を行ったりする際は、内ももの筋肉(内転筋)を活用します。この筋肉を使うことで、太ももが内向いて骨盤が前傾します。すると、重心を前に移動させやすくなったり、ジャンプしやすくなったります。
このように、内転筋を活用し続けることで、骨盤前傾の姿勢が癖づきます。結果として、「太もも裏側・背筋」の張った状態が続き、外旋筋の筋力が低下します。すると、関係する神経と血管に詰まりがおこり、痛みの症状が現れます。
特に行っているスポーツが陸上系の場合、内転筋が発達して骨盤が内に向きやすいです。走る競技を行っている場合は、特に気をつけるようにしてください。
さらに、スポーツ選手の場合、活性酸素の蓄積によって、外旋筋が低下します。運動を続け、筋肉に負荷がかかると疲れ物質の元となる「活性酸素」が発生します。活性酸素によって、傷ついた細胞は、脳からの命令により、流れてきた栄養分によって修復されます。
ただ、修復する際に大量の体液が流れると、古い体液が患部に多く残ります。運動を続けることで、大量の活性酸素が太もも周りに発生すると、古い体液が残りやすくなります。すると、古い体液が凝縮し、筋肉の凝りとなってしまうのです。
♣スポーツしている人⇒内転筋の活用による骨盤の前傾、古い体液が残ることによる筋肉の凝り |
脚の痛みの解消法:姿勢・ストレッチによって、治していく
いかがでしたか?外旋筋の凝りが起こる原因は生活習慣によって異なります。そのため、個々の生活スタイルに合わせて、具体的にゆるめるべき筋肉を考えていく必要があります。
そこで、最初に「外旋筋」をゆるめる手法について学ぶようにしてください。さらに、各生活スタイルに合わせて痛みの改善法について解説していきます。
外旋筋をゆるめる方法
横向き、もしくは仰向けに寝ます。次に、低反発のクッションか物を腰骨から4~5センチ程度斜め下の部位に当てます。ちょうどお尻のくぼみ付近に棒を当てて、指圧します。すると、痛くて気持ちの良い刺激があります。この部位が「詰まっている神経の部位」であり、痛気持ちいい部位を道具を使って指圧するようにしましょう。このような指圧を5分程度行うと、お尻の筋肉がゆるんできます。
あるいは、「腰方形筋」を緩めるのも、外旋筋をゆるめることにつながります。仰向けに寝て、ストレッチポールなどを肋骨と骨盤の間に当てます。次に、その状態で体を少しだけ揺らすようにしましょう。すると、腰方形筋が緩んできます。腰方形筋が緩むと、お腹をへこませるようにし、骨盤を垂直に立てるようにしましょう。すると、お尻の筋肉が締まった姿勢となります。
座位中心の人の場合
座り作業中心の場合、脳の疲れによる外旋筋の低下を抑えます。そのためには、首の前側・鎖骨周りの筋肉を緩めるようにしましょう。二つの筋肉を緩めるためには、「後ろにそらせるポーズ」が有効です。
まず、座った状態で肋骨と骨盤の間に親指を当ててください。次に、首の前側を伸ばすように、カラダを最大限に後ろにそらしてください。フィギュアスケートでも後ろにそらすポーズを行いますが、同様のことを座った状態で行います。両手を親指を立てて、肋骨と骨盤の間(腰方形筋)に当てて、上半身全体を後ろに反らすようにしてください。すると、胸から首にかけての筋肉がストレッチされます。
これによって、胸・首の血流低下を改善でき、効率よく脳内に酸素を送りこむことができます。それによって、脳内に必要な栄養が届き、脳ストレスを軽減できます。座り作業中に脚の痛みが起こっている方は、仕事の合間に積極的に後ろにそらせるストレッチを行うようにしてください。
立った姿勢の人が行いたいストレッチ:腸腰筋のストレッチ
立った人の場合、高い確率で太ももの付け根が凝っている可能性があります。腸腰筋を効率よくストレッチする方法として、脚を後ろにそらせる体操があります。
立った姿勢から、つま先を立てるようにします。次に、つま先を立てたほうの脚を後ろに引きます。すると、太ももの付け根から足先にかけてストレッチされる感覚があります。この体操を何回を行うことで、結果として腸腰筋の凝りが取れていきます。
スポーツ選手が行いたいストレッチ:内転筋のストレッチ
スポーツ選手が行うべきストレッチとして、内転筋のストレッチがあります。おススメするポーズとして「四股踏み」があります。相撲で行われる四股踏み動作を行い、
四股踏みの姿勢をとったら、上半身全体を上下に弾ませるように、お尻を小刻みに動かしましょう。これにより、内ももやお尻の筋肉を刺激することができます。動作中は姿勢を崩さないよう心がけ、「イッチニッ、イッチニ、イッチニ」とリズミカルに行いましょう。
上下に動かすのが慣れた場合は、次に左右・前後とお尻をスライドさせるように動かしてみましょう。股関節への体重の乗り方が変わって、よりトレーニング効果が出ます。
あるいは、四股踏みの姿勢から、左右の肩を交互に前に出して肩入れ動作をしてみましょう。股関節と肩甲骨周りの筋肉は連動しているため、股関節を鍛えることで上半身の動きを改善することができます。動作中は姿勢を崩さないよう心がけ、「イッチニッ、イッチニ、イッチニ」とリズミカルに行いましょう。
以上の内容のように、外旋筋の筋力が低下することによって、脚・膝の痛みが生じます。そして、外旋筋が凝ってしまう要因は、生活習慣によって異なります。そして、各生活スタイルに合わせて、凝りやすい筋肉に対して特化したストレッチを取り入れるようにしましょう。